top of page
検索
  • 執筆者の写真渡辺仁史

オルタナティブな空間

最近では代替医療など通常医療の代わりとしてあるいは並行して行われる医療などに用いられる「オルタナティブ」ですが、現代のものを否定して新しいものということではなくて、別の視点から新しい価値を生み出すようなデザインに対して「オルタナティブ・デザイン」あるいはオルタナティブ空間という概念があってもいいのかなぁと最近思っています。


技術が新しくなり暮らし方も変わってきている時代に対応したデザインに一番求められているのはその変化に対応した空間のしつらえや装置をあらかじめ空間が備えていることで、それを積極的に反映させる考え方がオルタナティブであるような気がします。


教育やビジネスの世界で二十世紀後半からこの考え方を提唱して実践してきて現在はデンマークの政党「The Alternative」の代表であるウッフェ・エルベック氏のムーブメントはやがて広く日本でも支持されるような時期がすぐそこにやってきています。


建築や都市のデザインにこのオルタナティブの概念を導入するために超えなければいけないハードルはデザインそのものではなくて、デザインシンキングを着実に実行することだと思います。そこで求められるのがユーザーと空間との関係を観察することから課題を抽出して両者の関係をモデル化すること、つまり我々の研究室が40年間思考してきたことでもあります。その成果がいよいよ社会に還元される時がこのオルタナティブ空間のデザインによって到来しました。


その一つの解が、今回の我が家の地下室のリニューアルで示すことができたのではないかと思っています。地下室という従来の概念ではない代替空間の捉え方、プラスチックフリーの地球環境を考えた素材の選定の仕方、利用者の多様な行動を想起させるような空間装置などなど、これまでのデザインの代わりにあるいはそれを補うような新しい試みが実施されました。


従来は倉庫のようにものを蓄えておく機能だったり、楽器演奏のための防音的な機能などが主流だった住宅の地下空間を、今回のリニューアルでは「地下に集う」という人と人との交流機能をテーマにデザインしました。そのためにそこでどのような集まる行為が行われるかを想定して、それが実現できる室内設計および空間装置を卒業生が運営するariadesignが実現してくださいました。


住宅でもオフィスでも人が「集う」空間には必要な大きさのテーブルと想定された人数分の椅子が用意されるのが従来の一般的な「集う」空間のあり方でした。しかもデザイナーは集う「部屋」は用意するけれどもそこに置かれるであろう家具にまで言及することはなかなかできませんでした。今回のリニューアルでは逆に空間はすでに既存ですからこれをどのように代替えしていくかという難しい課題がありました。


そこでariadesignが示してくれたのが「集う」人数に合わせて可変な空間が実現できる空間装置です。一つは室内側に設えられた縁側、もう一つが変容する家具です。全面フラットな床と限られた数の椅子では多人数に必ずしも対応できませんが、今回のリニューアルで用意された段差のある縁側とコルク素材による床があると、ほぼ最大で20人ほどが自分の定位置を確保できることが分かりました。さらに集まった目的に応じて変容する家具(今回はワゴン式のミニキッチンとテーブル)によって多様な集まり方に対応できることも確かめられました。


これが、まさにオルタナティブ、空間の機能を固定するのではなくて、そこに集まる目的と規模によって代替できるあるいは可変できるデザインが実現できたように思います。


以下の3枚の写真の一枚一枚を見ていると、このしつらえではこんなことができそうだと想像できると思います。いずれここで行われている多様な「集う」様子も紹介していきたいと思います。


1)変容する家具を収納して床面を最大にしたシーン(立食スタイルでの集まりや子どもたちが床に座り込んで遊ぶのに最適な構成)



2)キッチンに併設してテーブルをセットしたシーン(少人数の打ち合わせやランチに最適な構成、手前にも広い空間が確保できている)



3)可動式キッチンワゴンユニットを部屋の中央に設えたシーン(テーブルの周りをぐるっと回ることができ展示やパーティにも対応する構成、もちろん縁側にも着席すれば大人数での会議も可能)

閲覧数:227回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comentarios


bottom of page