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執筆者の写真渡辺仁史

未来を(自然に倣って)設計する



これは私の数少ない愛読書の第10章のタイトルです。この本を最初に手にしたときには我が家の天井を自由に歩き回るヤモリがどうして落ちてこないのかを知りたかったからです。いまではそれが「分子間引力」であることも分かりましたし、別の章で紹介されている三浦公亮先生の「折りたたむ」という平面と立体との融合「三浦折り」が自然の原理からできていることも理解できました。


ともすると、自然と人工は対立的な概念として捉えられてしまいますが、ナノレベルで自然を見てみるとそこには最先端技術が目指しているものや建築技術の原点が存在していて、ときには無意識のうちにそのような自然の原理を我々は発見し取り入れているのかもしれません。


棚田を見て「自然に癒される」と言いますが、これほど人工的な造形が他にあるでしょうか?雑多で複雑な都市を逃れて郊外に行くとホッとすると言うのも、まだまだ都市デザインが自然から学びきれていないことの証だとも思えます。自然の形だけではなくてその構成原理や働きまで理解した上で自然から学び模倣することこそ、デザインの未来の課題ではないかと思うのです。


その意味でも、もっと自然を観察する、そしてその成り立ちや構成要素さらに構成原理について知って、識ること(バイオ・インスピレーションを得ること)が自然と人間との理想的な共存ではないかと思います。


接着剤がなくても接着する「ヤモリの指」からは、無限の可能性が生まれてくるように、これからのデザインはもっと自然に倣って考えていかなくてはいけないし、石垣島で子どもたちと一緒に進めているワークショップの大事な視点だと改めて思いました。

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