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執筆者の写真渡辺仁史

見えないものを見せる

「可視化」は、大学時代からの私の研究テーマの一つでした。建築空間の中で生活する人間の行動を予測する技術を開発したことが私の学位論文であり、まだ起きる先の人間の行動を予測してそれを建築空間上にプロットするという行動シミュレーションのモデルを提案するというものでした。これは災害時における建築物からの避難予測として現在では欠かせない技術となりましたが、それにしても「出入り口の前にたくさんの人が殺到する」とテキストで表現してもその受け取り方は人それぞれです。そこで計算した結果を実際の建築図面上に人間の投影図として表現し、その混雑具合を視覚的に見せることで一般の利用者にも分かりやすく表現することができました。

未来の生活空間もそうですが、まだ見えないもの、あるいは視覚としては捉えられないものを「見える」ようにする考え方や技術が可視化です。そこで、人間の暮らしの快適さを評価する感覚つまり五感を視覚化しようという試みを大学院の授業で何度も取り上げました。

視覚そのものでは、超高速で動くものをハイスピード撮影してゆっくり見せるとか、膨大な時間をかけて変化するものを数秒に縮めて見せるなども可視化の一つです。講義の課題としては視覚以外の感覚をビジュアル化することを試みました。キャンパス中庭の匂いを可視化する、赤ワイン・白ワイン・ロゼの味覚の違いを可視化する、建築素材の肌触りを言葉として可視化するなどなど、とてもユニークな表現がたくさん飛び出しました。その課題として取り上げられなかったのが聴覚の可視化です。

研究室の論文としては、視覚障害者がどのように音を認知しているのかを音の伝搬を球体の連続として可視化する試みは発表しましたが、講義の課題としてはやり残していました。つまり、音楽を可視化しようというものです。音楽を聴いて頭の中では様々なイメージをかきたてますが、それを目で見えるようにしようというわけです。今回は、その手始めとして音階の一つ一つに色を当てはめ、これを五線譜で表現された音の流れに対応させてみました。音符の長さが色の帯の幅に対応しています。

取り上げたのは「ムーンライトセレナーデ」ですが、♯や♭は無視しています。もちろん配色の仕方でそのイメージは違ってくると思いますが、一つの表現としての可視化の結果です。




音階と配色の関係は、仮に下記の図のように設定しました。




これによって、曲のイメージの違いが表現できたかどうかは、別の曲にも同じルールを当てはめてみないとわからないということで、もう一曲は沖縄で歌われている「てぃんさぐの花」を取り上げてみました。先ほどのムーンライトセレナーデと並べてみると、なんとなくそれぞれの曲を聴いた時の印象の違いが「見える」かなというところです。




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