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  • 執筆者の写真渡辺仁史

炭素の力

自分が食べている野菜がどんなものか全く知識がないままに、誘われて石垣島の花谷農園を訪ねて、衝撃的な事実に驚くとともに、未来の日本人の食事のあり方にも関心が出てきました。農大出身のご夫婦(ご主人は石垣市議会の議員さん)が営む「花谷農園」はゴーヤーやズッキーニなどの島野菜を栽培しているのですが、その栽培方法が従来の化学肥料や有機肥料を使う農法とは全く違っていたのです。つまり、無農薬・無肥料で土作りをしていました。

花谷農園のゴーヤーハウス

自然の理にかなった農法ということで行われている草生え放題の自然農法あるいは自然栽培とは少し違うように感じたこの方法は「たんじゅん農」と言われているそうです。ブラジル在住の農家・林幸美さんが雑誌に投稿した記事をきっかけに広まった炭素循環農法のことで、一般的な栽培では主な肥料はチッソだが、炭素循環農法では圃場の微生物を生かすためにチッソより炭素の施用が必要だとする考え方のようです。原理は簡単だということで単純農とかけて作られたので「たんじゅん農」と平仮名表記をするようです。


C/N比(炭素量とチッソ量の比率)の高い廃菌床やバーク堆肥、緑肥、雑草などを浅くすき込むだけで、その他の肥料はいっさいなし、それだけで虫も病気も寄らない極めて健康な作物が育つという。この比率はC/N比が40以上が菌の繁殖が良いそうで、花谷農園ではススキをチップにして土にかぶせていました。


花谷さんとススキの粉砕機

現代農業では野菜の色や生育を良くするために窒素肥料を使っていますが、それが土を硬くしてしまったり、痩せさせたり、虫のつく原因になっているようです。実は葉っぱの色が濃い緑色ではなくて、少し黄色く褪せた色の方が味はずっと良いのですが、見た目の商品価値が落ちるのでチッ素をたくさん施した商品が出回っているようです。栄養価が少なく、まずい野菜を我々は食べていたのですね。


花谷農園でのたんじゅん農はまだ2年目ですが、現在はゴーヤーとズッキーニの畑でたんじゅん農を実施して試行錯誤を続けているとのことでした。


ゴーヤーのたんじゅん農栽培の様子

ズッキーニのたんじゅん農栽培のハウス

たんじゅん農では、土の中の糸常菌を増やすために炭素を与えるのですが、それが土の中の有機物をゆっくり分解して、チッソがなくても野菜が本来の姿で育つということで、わざわざチッソ過剰にしなくても土の中にある有機物で十分なのだそうです。


花谷農園の畑では、すでに糸状細菌が増えており、ススキチップの下はふわふわの居心地の良さそうな土でした。微生物が本来の土を作ってくれているのですね。


糸状菌の白いカビのようなものがいっぱいできていました

野菜を土の上の見た目だけで評価してしまうと、どうしても化学的な方法で対処しがちですが、地中深く根を張った野菜は本来の健全な姿を取り戻し、健康な状態になりますが、健全な野菜には虫はつかないそうです。つまり無農薬が当たり前なのですね。たんじゅん農では土が改善していくと1mから2mぐらいまで適切な土の状態になるそうで、この農園でもすでに50cmほどの深さまで棒がすっと刺さる状態でした。


棒が深くまで刺さるほど状態の良い土

たんじゅん農は指導者がいたり解説本があるというのではなく、先駆者のノウハウを共有しながら新しく取り組み始めた農法ですが、地球の本来の姿、我々の食生活を見直す大切なきっかけになる王な気がしました。そして収穫された野菜をぜひ食べてみたいものです。


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